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新人王・祝賀会

2013年のプロ野球開幕に向けて、ヤクルトの沖縄県・浦添キャンプは順調だった。中継ぎからスタートした小川泰弘投手〔愛知県立成章→創価大学〕は、小川淳司監督が「なかなか失点しない面白い存在」との評価だった。阪神担当のスポーツニッポン新聞社・編集委員の内田雅也記者が、わざわざ阪神キャンプの休日を利用し浦添に来て、名物コラム『追球』にセンバツ大会に出場当時の写真を載せてくれた。打線の援護もあり、先発投手として順調に勝ち星を重ね、何とオールスターゲームにも出場、最終的には16勝4敗、勝率8割の好成績。セ・リーグ最優秀新人賞、勝率第1位投手、最多勝利投手のタイトルを獲得した。

 2013年12月28日〔土〕、豊橋のホテルで祝賀会が開かれ、秋の東アジア大会で小川投手と一緒に台湾戦を戦った小島啓民さん〔長崎県立諫早→早稲田大学→三菱重工長崎、小久保侍ジャパンコーチ〕と、東日本大震災〔2011年3月11日〕を乗り越え、21世紀枠で第84回選抜大会〔2011年〕に出場され、阿部翔人主将が選手宣誓を務める過程をTBS系列の人間密着ドキュメンタリー番組『情熱大陸』に出演された唯一人の高校野球指導者・松本嘉次さん〔当時は石巻工監督、現在は仙台工監督、宮城県高野連理事長〕から頂いた色紙のプレゼンターとして私は登壇した。

 小島氏の出身校・諫早は、成章が第44回選抜大会〔1972年〕で3-5で敗れた相手だが、早稲田大学在学中の冬、長崎に帰省する途中で成章に立ち寄り、ユニフォーム姿で臨時コーチを務めた縁があった。諫早の野田勝己監督〔2009年に「育成功労賞」を受賞〕と選抜大会で親しくなった山本昌彦監督〔2005年に「育成功労賞」の前身である「イヤー・オブ・ザ・コーチ」を受賞、2013年6月にご逝去〕は、1年夏の甲子園で3失策の屈辱を経験した大学生の小島氏を優しく大歓迎してくれた。高校野球は人と人を繋げてくれる素晴らしいものである。

 1次会では記念写真撮影と各テーブルでのご挨拶回りで忙殺され、お腹をすかせたままの小川投手を野球部関係者のご配慮で、2次会で焼き肉屋に誘導した。大学を卒業して1年もたたない若者に、妻が上手に牛肉を焼いて小川投手のお皿に盛ってくれた。焦げてしまった肉は私の皿に回ってきたが、河合邦宗監督、糟谷寛文元監督、大林省司部長のホッとした表情に幸せいっぱいになった。

蛭間俊之